知ってる?電話の『音声案内』する中の人
電話オペレーターとかに繋がる前に流れるアナウンスする人の正体とは?
ある日のこと・・・。
『申し訳ございません。現在、電話が大変混み合っております・・・』
うがー!! また繋がらないのかよこのクソサイトはー!!
どうしたの? なんかすごく怒ってるけど
とある通販サイトで先着販売してるゲーム機買おうとしたんだけど、全然繋がらないんだよ
あー・・・switchかあ・・・。発売からだいぶ経つのにずーっと品薄だよねこれ
さっきからずーっと『電話が混み合っております』ばっかで、ほんとに腹立つ
そんなこと言わないでくれよー。のぞみちゃんは悪くないんだからさー
は?のぞみちゃん?頭大丈夫か?
ま、のぞみちゃんだったのか分からないけどさ、自動音声流れたでしょ?あれのことだよ
あれか。機械音声だったのか。全然気づかなかったわ
あ、もしかしたら人間かもしれないね
どっちだよ!
まあ素人には多分、機械なのか人間なのか聞き分けるのは難しいと思うよ。それくらい機械音声も進化してるしね
というか、なんでそんな事いちいち言うんだよ
それはですね、実は僕がコールセンターとかの『音声ガイダンス』なんかを作っていたりした時期があるからなんだ!
・・・はあ
音声ガイダンスを作るお仕事ってどんなこと?
皆さんもお問い合わせで電話したお店から、オペレーターや従業員に繋がる前に『オペレーターにお繋ぎします』とか、『ただいま電話が大変混み合っております』とか、『音声ガイダンスに従ってボタンを押して云々〜』のような音声を聞いた事があると思います。
そういう電話の音声案内する人がどんな人なのかって考えた事があるでしょうか?
ちょっとマニアックですよね。
でも、そういうお仕事も世の中にはあるんですよ。
電話のお問い合わせは、企業にとってはお客さんとの窓口になるとても重要なサービスなのです。
だから、失礼のないように対応するためにはどうしたらいいかを考えないといけないわけですね。
音声案内も、そのために必要なサービスなんだ
僕は入社一年目の年に、こうした電話案内や、コールセンターのシステム構築なんかに携わっていたりしました。
要するに、企業の電話窓口なんかを設置するお仕事です。
そこでお客さんが電話をかけてきた時の対応をオペレーターが直接やるのか、自動音声案内で済ませるのか、といったシステムを作るわけなんですけど、「音声案内を女性の声で作成してくれ」って言われたら、僕の出番です!
具体的にどんな事をしていくのか、説明していきますね。
お客さんから音声案内用の文言をもらう
まず、どんな文言にしたいのかをお客さん(ここではお問い合わせ窓口を作りたい企業の事)に聞きます。
例えば、こういうやつです。
A「こちらはイヌラッパ食品です。大変申し訳ございませんが、ただいまの時間は、営業時間外となっております」
B「こちらはイヌラッパ食品です。オペレーターにお繋ぎしますので、もうしばらくお待ちください」
C「こちらはイヌラッパ食品です。店舗リニューアルのため、◯月◯日から、◯月◯日まで営業をお休みしております」
お客さんからこういう文言をもらうわけですね。
もちろん、文言の内容に制限はありません。
「fu◯k」でもなんでも、言われれば作ります。
ここで実際にあったお客さんからのオモシロ文言集〜!
・・・とかできればよかったのですが、さすがにありませんでした。
やはり商品の注文や問い合わせに関する部分なので、ここでふざけるお客さんはいないみたいです。
どのお客さんも、テンプレートみたいな文言ばかりでした。うーん、つまらない!
実際に録音しよう!
文言を送ってもらったら、実際にその文言で音声を録音します。
この時に一応、機械音声にするか、人の声にするのかお客さんに聞きます。
ちなみに機械音声ってどんなものだよって思うかもしれませんが、こういう製品があるんです。
AITalk® 声の職人 評価版ダウンロード | 株式会社AI(エーアイ)
こういうところで音声のライセンスを買って使うわけですね。
実際にサイトを見てもらえばわかると思うのですが、声の種類は多種多様で、ちゃんと感情表現もしてくれるんです。
これにテキストを流し込むだけで音声が作れます。
もし、ちょっとイントネーションに違和感があれば、調整をする事もできます。
ちなみに、上のは法人向けって感じで、個人で使う人だとVOICEROIDが人気だよね
お、これニコニコとかでゲーム実況する人なんかがよく使ってるやつだな!
使い方はだいたい一緒です。
こっちは萌え系の可愛らしい声に特化したやつですね。
フリーソフトだと、「ゆっくり」の愛称で有名な 『SofTalk』なんかもあります。
これも有名ですね。
使ってみればわかるんですけど、こういうソフト、テキストを入れるだけなので本当に簡単なんです。
これで機械音声の録音作業(データを流すだけ)は完了です。
さて、これが音声案内の声が機械でもいいよって言ってくれたお客さんの場合です。
お客さんには「機械音声ですと、文言の変更があった場合に柔軟に対応可能で〜」みたいなセールストークを言うんですけど、ぶっちゃると、機械音声だと作業者が楽できます。
だって、テキスト読み込ませるだけで音声データが作れますからね。
あと、全部一人で出来ます。
しかし、お客さんに声の希望を取るとほとんどの人が機械音声よりも人を選びます。
やっぱり「人の暖かみがあった方が〜」とか思うんですかね。
まあ、うちも商売なので、ここで言っている「女性スタッフ」を音声案内の専属スタッフのような感じで紹介するせいもあるしょう。
「プロがいるんなら、是非頼みたい」ってなる気持ちもわかります。
専属「女性スタッフ」の正体とは・・・?
実は、この「女性スタッフ」、ごく普通の女性社員です。
普段は事務の仕事をしています。
特別声が良いとか、そういうのはありません。
音声案内の声に選ばれる基準は、本当にクソみたいなもので、頼みやすい人かどうか、みたいな感じです。
別に普段暇なわけでもないし、むしろ忙しい中で頼みに行かないといけないので、当時入社一年目の僕は申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
ちなみに頼みやすい人に頼みに行くようになったのは、先輩社員からのアドバイスでした。
それは、もし頼む人を間違えると大変な事になってしまうからなんだと後から気づいたのです。(こぼれ話に続く)
録音は、静かな会議室でおこないます。
マイクとか、専用の録音機材を使うのかと思いきや、実は普通の電話機で録音しています。
電話に直接録音するんじゃ留守番電話サービスとあんまり変わらないじゃん
まあ、理由はいろいろあるんですが、どんなに高音質で録音したところで電話機越しなら無意味だからです。
そもそも、電話の音声は決まった周波数しか音が出ない仕様なので、電話のマイクも高音質なマイクも、結局受話器から聞こえる声は同じなのです。
その代わり、出来るだけ聞き取りやすいようにはっきり発音するとか、あまりイントネーションを強調しないようにするとか、声に関してはたまに注文を出す時はありました。
あー、そのための「頼みやすい人」か。
いや、それでも本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだからね?
録音した音声はそのまま電話交換機上に保存され、あとはそのお客さんのお問い合わせ窓口に電話をかけたら自動で音声が流れるように設定してあげれば良いのです。
というわけで
ちょっとマニアックな内容だったかな?
あんまりこういう部分を気にする人っていなそうだけどな
電話の音声案内の声ってこういう風に録音してたんだよっていう、まあ音楽に通じる部分もあるんじゃないかと思って
全然ないわ
ま、とにかく音声の録音って実は全然大した事してないんだよっていう話でした
ちょっとしたこぼれ話:音声録音の最大の恐怖
それはまだ会社が小さかった頃、女性社員も少なかったため、音声録音は毎回同じ人が担当していました。
そしてその人は出世をしていき、管理職に就き、今では会社の部長となりました。
もちろん仕事の出来る人で、とてもサバサバしており、男性社員からも恐れられています。
・・・さて、そんな方でも、昔は音声の録音もしておりました。
もし、昔からのお客さんで「新しい音声ガイダンスを追加したい」と頼まれた時は、この部長に録音のお願いをしなくてはなりません。
いやー、入社一年目の下っ端である僕が、部長に「こういう感じで読み上げてください」みたいな指示を出すのは本当に緊張しました。
部長の貴重な時間を割いて録音のお願いをするのは本当に勇気が必要で誰もやりたがらなかったし、会議室ではその部長と二人きりで気まずいし、こちらもミスして時間が余計にかからないよう、細心の注意を払って録音準備をしたものでした。
まあとにかく、録音する作業も大変だったんです。それだけです。
あー!!というかこんな話聞いてたらswitchの電話予約終わっちゃったじゃないかー!!
ど、どんまい・・・